日本が世界に誇る酒といえば、やはり日本酒を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし近年、日本のワインも少しずつ注目を集め、その価値が世界的にも評価され始めています。
実は日本ワインの歴史は約150年と意外なほど古く、日本の風土と日本人ならではの味覚によって育まれてきたワインは、和食との相性も抜群! 近年では特に中国、台湾、香港といったアジア市場を中心に輸出も増え、その存在感を強めています。
この記事は、ベストセラー『図解 ワイン1年生』(サンクチュアリ出版)の著者である小久保尊氏に監修いただき、奥深い日本ワインの世界を、その歴史から旅先で訪れたいおすすめワイナリーまで、じっくりとご紹介します。
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※法定年齢未満の飲酒は禁じられています
「日本ワイン」とは?

日本国内で製造されるワインは大きく分けて2種類あります。ひとつは、国産ぶどうのみを原料として国内で製造されたもの。これこそが、私たちが「日本ワイン」と呼ぶもので、その旨が表示されます。
もうひとつは、輸入した濃縮果汁を原料とするものや、輸入ワインをブレンドして使用したもので、これらは「海外原料使用ワイン」として「日本ワイン」と表示することはできません。
つまり、「日本ワイン」と表示されているものは、栽培から醸造まで、すべて日本国内で行われた、100%国産ワインなのです。
ラベルを見れば「日本ワイン」かどうかがわかる

日本ワインと認められるものには、必ず裏ラベルにその旨が記載されています。さらに、日本ワインの中でも、以下の厳しい条件を満たしたものに限り、ラベルに特定の情報を表示することが許されています。これにより、消費者はそのワインがどこで、どのようなぶどうから、いつ造られたのかを正確に知ることができます。
① 地名:ぶどうの収穫地、または醸造地に限り表示が可能。収穫地の場合、地名が示す範囲内にぶどうの収穫地があり、85%以上使用されていることが条件です。
② ぶどうの品種名:表示する品種が85%以上使用されている場合のみ。また、3品種以上のぶどう品種を表記する場合は、それぞれの割合を併記し、合計85%以上になる必要があります。
③ ぶどうの収穫年:表示する収穫年のぶどうが85%以上使用されている場合に限り、収穫された年(ヴィンテージ)を記載できます。
実は150年の歴史!日本ワインの歩み

日本ワインの歴史は、明治時代初期、日本の近代化が急速に進む中で、政府主導のもとにその幕を開けました。西洋文化が積極的に取り入れられる中、ワイン醸造もそのひとつとして注目されたのです。
日本初の民間ワイン醸造場「大日本山梨葡萄酒会社」が設立されたのは1877年。その場所は、現在の山梨県甲州市勝沼町にあたる祝村でした。日本ワインといえば山梨の名前が真っ先に挙がるのは、このような歴史的な背景があったからこそ。
そして、1879年に初の国産本格ワインが誕生します。この時、使われたのが日本固有のぶどう品種である「甲州」。まさにここから、本格的な日本ワイン造りの歴史が始まり、今日まで約150年もの間、その技術と品質は脈々と受け継がれ、発展を遂げてきました。当初は山梨県が中心でしたが、今では北海道から九州まで、日本各地で個性豊かなワインが造られるようになっています。
日本酒と何が違う?日本ワインの魅力を紹介!

日本ワインは日本酒と比べて語られることも少なくありません。どんな共通点や違いがあるのでしょうか?
どちらも「醸造酒」
日本ワインと日本酒の最も大きな共通点は、どちらも「醸造酒」であるという点。醸造酒とは、原料を発酵させることでアルコールを生成するお酒のこと。日本酒は米を、日本ワインはぶどうをそれぞれ酵母の力で発酵させて造ります。
歴史が長いのはワイン!
世界的な視点で見ると、ワインの歴史は日本酒よりもはるかに長く、起源は紀元前数千年にまで遡ります。その理由として、ぶどう自体に糖分と酵母が含まれており、水を加えずとも自然に発酵が始まるという、非常にシンプルな造りである点が挙げられるでしょう。
風土を表現するワイン、思想を表現する日本酒
日本酒は杜氏と呼ばれる造り手の技術や哲学が色濃く反映され、「この蔵の、この杜氏が造りたい味」を追求する傾向にあります。対してワインは、「テロワール(terroir)」という言葉に代表されるように、その土地の気候、土壌、地形、そしてそこに住む人々の営みといった「風土」を表現することを重視します。
ワインの方が、カロリーが低い
健康面で気になるのがカロリーや糖質ではないでしょうか。一般的に、ワインは日本酒に比べてややカロリーが低く、糖質は約半分と言われています。これは、ワインがぶどうの糖分をほぼアルコールに変換するのに対し、日本酒は米のデンプンを糖化させ、その一部が糖として残るためです。
日本で作られている白ワイン用品種

白ワイン用として日本各地で栽培されている主なぶどう品種をご紹介します。
甲州(山梨)
日本固有のぶどう品種であり、約1300年の歴史を持つと言われる「甲州」。主に山梨県で栽培されており、その白ワインは、柑橘系の爽やかな香りと、和柑橘を思わせるほろ苦さ、そして穏やかな酸味が特徴です。特に和食との相性は抜群。
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ナイアガラ(長野)
主に長野県で栽培されている「ナイアガラ」は、アメリカ原産の生食用ぶどう品種です。そのワインは、マスカットやアロマティックな花の香りが非常に豊かで、口に含むと甘くフルーティーな味わいが広がります。
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デラウェア(山形)
小粒で甘いぶどう「デラウェア」は、山形県を中心に栽培されており、ワインより生食用として有名。デラウェアから造られるワインは、ほんのりとした甘みと優しい酸味が飲みやすく、カジュアルに楽しめるワインとして人気があります。
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アルバリーニョ(新潟)
スペイン原産のとして有名ですが、近年、新潟県などの涼しい地域で栽培が試みられています。柑橘類や白い花の香りに、微かな塩味やミネラル感が感じられるのが特徴で相性がよいのは魚介料理。日本海の海の幸が豊富な新潟のテロワールを表現する品種として、その将来が期待されています。
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日本で作られている赤ワイン用品種

個性豊かな赤ワインを生み出している主要なぶどう品種をご紹介します。
マスカット・ベーリーA(山梨)
日本固有のぶどう品種であり、日本の気候風土に適応した「マスカット・ベーリーA」。主に山梨県で栽培されており、その赤ワインは、いちごやラズベリーのようなチャーミングな果実香と、キャンディのような甘い香りが特徴。タンニンも控えめで、特に醤油や味噌を使った料理との相性が抜群。
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メルロー(長野)
世界中で愛される高級品種ですが、日本では長野県を中心に栽培されています。日本のテロワールによって、力強さもありながら、繊細さも兼ね備えています。肉料理など、しっかりとした味わいの料理によく合います。
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キャンベル・アーリー(岩手)
アメリカ原産の生食用ぶどう品種である「キャンベル・アーリー」は、岩手県などで栽培され、ワインにも使用されています。イチゴジャムのような甘い香りと、ほんのりとした苦みがアクセント。少し冷やして飲むのもおすすめです。
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ピノ・ノワール(北海道)
フランス・ブルゴーニュを代表する品種ですが、近年、北海道で栽培が盛んに行われています。繊細で複雑な香りが特徴で、タンニンはきめ細かく、エレガントな酸味が全体を引き締めます。素材の味を活かした料理とのマリアージュが楽しめます。
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和食×日本ワインのおすすめのペアリング
日本ワインは、その繊細な味わいから、日本酒と同様に和食との相性が非常に良いのが特徴です。外国人観光客にも人気の和食と、それにぴったりの日本ワインをご紹介します。
しゃぶしゃぶ

薄切りのお肉を煮立ったお湯にさっとくぐらせてタレでいただくしゃぶしゃぶは、合わせるタレによって相性の良いワインが異なります。
ポン酢しょうゆには、キャンベル・アーリーがおすすめ。ポン酢しょうゆの柑橘系の風味とワインのフルーティーさが互いを引き立て合います。
ごまだれには、少しコクのあるメルローを合わせます。メルローの持つ穏やかなタンニンと凝縮した果実味が、ごまだれの濃厚な味わいとマッチ。
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焼き鳥

塩味の焼き鳥には、デラウェアがぴったり!デラウェアの優しい甘みと酸味が、素材そのものの味を引き立て、さっぱりと楽しめます。
タレ味の焼き鳥には、マスカット・ベーリーAが高相性。タレの甘辛い味わいとワインの果実味が絶妙です。
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寿司

寿司には、日本固有品種である甲州が最高のパートナー! 甲州の持つ穏やかな酸味と和柑橘系のニュアンス、そしてミネラル感が、魚の脂を洗い流し、ネタとシャリの一体感を高めます。
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カニ料理

カニ料理には、スペイン原産で近年日本でも栽培されているアルバリーニョがおすすめです。アルバリーニョの持つしっかりとした酸味とミネラル感、そして柑橘系の香りが、カニの甘みと繊細な風味を際立たせます。
旅先で日本のワイナリーを訪れよう
日本ワインの魅力をさらに深く知るなら、実際にワイナリーを訪れてみるのが一番!
日本各地に点在するワイナリーは、豊かな自然や歴史的な観光地に近い場所に位置していることが多いです。ワインだけでなく、その土地ならではの景色や文化、そして地元の食材とのマリアージュも一緒に楽しめるため、観光の目的地としても最適ですよ。
多くのワイナリーでは、試飲や商品の購入を行うことができます。なかには購入したワインを海外へ発送してくれるサービスを提供してるところも。気に入ったワインを旅の思い出として持ち帰るだけでなく、遠く離れた家族や友人にも贈れるのは嬉しいポイントです。
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おすすめワイン産地とワイナリー
日本ワインの魅力は、その土地ごとの風土が育む個性豊かな味わい。ここでは、注目のワイン産地と、それぞれの地域を代表するワイナリーをご紹介します。ワイナリーを訪れる際は必ず公式HPで最新情報を確認してから訪れましょう。
山梨県
日本ワイン発祥の地であり、日本ワイン生産量の3割以上を占める最大の産地です。日本固有品種である甲州やマスカット・ベーリーAの栽培が盛ん。
くらむぼんワイン(甲州市勝沼町)

1913年創業の、山梨県勝沼の老舗ワイナリー。2014年から山梨ワインから現在の「くらむぼんワイン」へと名前を変えました。自社畑では、化学肥料、殺虫剤や除草剤を使わず、ぶどう本来の力を引き出すことに注力し、特に甲州ぶどうから造るワインに力を入れています。ワイナリーツアーは現在休止中。

- 主なワイン品種:甲州、マスカット・ベーリーA、シャルドネ、ヴィオニエ、タナ
- 住所: 山梨県甲州市勝沼町下岩崎835
- アクセス:勝沼ぶどう郷駅よりタクシーで8分、勝沼ICより車で5分
- 公式HP:https://kurambon.com/
甲州市勝沼ぶどうの丘(甲州市勝沼町)
ワイナリーではありませんが、ワインカーヴやワインサーバーがあり、甲州市の様々なワインを試飲できます。他にもレストラン、温泉、宿泊施設もある複合施設です。
- 住所:山梨県甲州市勝沼町菱山5093
- アクセス:勝沼ぶどう郷駅よりタクシーで5分、勝沼ICから車で10分
- 公式HP:https://budounooka.com/
長野県
寒暖差の大きい気候と多様な土壌を持つ長野県は、山梨県に次ぐ日本ワインの主要産地。特にナイアガラやメルローが有名。北から千曲川ワインバレー、日本アルプスワインバレー、桔梗ヶ原ワインバレー、天竜川ワインバレーの4つのエリアに分類され、それぞれ土地の風土を生かしたワイン造りに取り組んでいます。
リュードヴァン(東御市/千曲川ワインバレー)

荒廃した農地を再び豊かにしようとぶどうを植えることからスタートしたワイナリーです。目指すのは、土地の力を引き出し、個性的で表情豊かなワイン。ワイナリーにはカフェレストラン、さらに週末限定で宿泊も提供しています。ワインと料理のマリアージュを楽しめると大人気!

- 主なワイン品種:シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、ピノ・ノワール、メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨン
- 住所: 長野県東御市祢津405
- アクセス:田中駅からタクシーで10分、東部湯の丸ICから車で5分
- URL:https://ruedevin.jp/
ヴィラデストガーデンファーム&ワイナリー(東御市/千曲川ワインバレー)

エッセイストで画家の玉村豊男氏がオーナーを務めるワイナリー。美しいぶどう畑を眺めながら、その畑のぶどうからワインと、地元食材を使った料理を楽しむ、そんな「田園のリゾート」をコンセプトに作られたワイナリー。ワイナリーツアーも実施しており、豊かな自然の中でゆったりとした時間を過ごせます。

- 主なワイン品種:シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、ゲヴェルツトラミネール、ピノ・ノワール、メルロ
- 住所: 長野県東御市和6027
- アクセス:田中駅または大屋駅からタクシーで10分、東部湯ノ丸ICから車で10分
- URL:https://www.villadest.com/
北海道
冷涼な気候がワイン用ぶどう栽培に適している北海道は、近年特に注目を集めるワイン産地です。ピノ・ノワールやシャルドネなどの欧州系品種から、ナイアガラなどの品種まで、多様なワインが生まれています。
ドメーヌ・タカヒコ(余市郡余市町)

日本で最も入手困難と言われる幻のワインを造ることで知られるワイナリー。畑やワイナリーの見学はできませんが、展望台テラス「ナナツモリ」からナナツモリの畑を一望できます。シンボルマークをバックに一度は記念撮影がしてみたいもの。

- 主な品種:ピノ・ノワール、ツヴァイ
- 住所:北海道余市郡余市町登町1383(中井観光農園入口近く) ※展望台テラス「ナナツモリ」
- アクセス:余市駅からタクシーで8分、後志道余市ICから車で3分
- URL:https://www.takahiko.co.jp/
新潟
日本酒のイメージが強い新潟ですが、近年「新潟ワインコースト」として新たなワイン産地が注目を集めています。角田山の麓に広がる広大なぶどう畑に、個性豊かなワイナリーが点在しています。
新潟ワインコースト(新潟市西蒲区)
新潟市から車で30分、本海に広がる海岸地帯に位置するワインエリア。「カーブドッチワイナリー」「フェルミエ」「ドメーヌ・ショオ」「カンティーナ・ジーオセット」「ルサンクワイナリー」の個性的な5つのワイナリーが徒歩圏内にあり、それぞれが異なる哲学と個性でワイン造りに取り組んでいます。また、「カーブドッチワイナリー」と「フェルミエ」にはそれぞれレストラン、さらに「カーブドッチワイナリー」には2つの宿泊施設も併設。「滞在型ワイナリーリゾート」として注目を集めています。
- アクセス: 内野駅よりタクシーで15分、巻潟東ICから車で15分
公式HP:
- カーブドッチワイナリー:https://www.docci.com/
- フェルミエ:https://fermier.jp/
- ドメーヌ・ショオ:https://domainechaud.net/
- カンティーナ・ジーオセット:https://ziosetto.base.shop/?fbclid=PAZXh0bgNhZW0CMTEAAad4oMHc7WgFmXIHEekexrkzuD_CUra4WYPRwNMSTfFf0l-QZ5mZ4-fFWVe8bA_aem_90ub7_B582OAGt8tEuarlw
- ルサンクワイナリー:https://lecinqwinery.com/
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知って、飲んで、訪れて、日本ワインを楽しもう
日本ワインに触れることは、日本の風土や文化を味わう上での新しいきっかけとなるでしょう。まずは身近な一本から試してみるもよし、次の旅の目的地としてワイナリーを訪れてみるもよし。知って、飲んで、そして訪れることで、きっと新たな発見と感動が待っているはずです。
監修者/小久保 尊氏
千葉県船橋市出身。日本ソムリエ協会認定ソムリエ、CPA認定チーズプロフェッショナル。ぶどうの品種をキャラクターのように擬人化し、ワイン初心者にも分かりやすく楽しく学べると話題になった著書『図解 ワイン1年生』(サンクチュアリ出版)は、累計発行部数16万部を突破するベストセラーに。現在は地元・船橋の「FUNABASHI COQ WINERY」にて、ワイン造りにも取り組んでいる。
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