【専門家監修】京都弁とは別物?「おおきに」「はんなり」など、京ことばの特徴と例文一覧

京都では、古くから使われている独特の言葉遣い「京ことば(kyokotoba)」が話されています。表現の違いだけでなく、イントネーションも独特で、上品で優雅な印象を受けませんか?当記事では、そんな「京ことば」について、基本的な特徴、知っておきたい挨拶表現・観光地で役立つ表現など役立つ情報を一覧でご紹介します。

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「京ことば」はどんな方言?

京都エリアで話されている「京ことば」。京都は平安時代から明治維新まで、長い間、「日本の都」でした。現在は、方言として扱われていますが、当時は、「京ことば」が、「標準語」でした。

また、「京ことば」は、一般的に方言として認識される「京都弁」とは異なり、京都に暮らし続けていきた人々が日常的に使う言葉で、その言葉に込められた温かさや丁寧さ、気配りが感じられ、京都の歴史や文化が根付いています。

しかし、他の方言と同様、社会構造や生活の変化から、消滅し、話されなくなっていく「京ことば」があるのも事実。「貧相な」を意味する「しょうびんな」、「困った」を意味する「なんぎな」、「うらやましい」を意味する「けなりい」といった言葉が挙げられます。

実は2種類ある京ことば

京ことばは、宮家や公家に仕えた女房が用いた「御所ことば」と街中で日常的に話されていた「町方ことば」の2種類あるとされています。さらに、「町方ことば」には、西陣織で知られる西陣には「職人ことば」、祇園には「花街ことば」、室町問屋街には「室町商人ことば」などがあります。

よく使われる京ことば

京都を観光している際に、よく耳にするのは「ありがとう」を意味する「おおきに」。「大きにありがたし」が語源とされています。また、お土産物店などで入店した際、耳にするのは「おいでやす」や「おこしやす」。どちらも「いらっしゃいませ」を意味します。

「京ことば」の特徴:標準語との違いを徹底比較!

京ことばには、イントネーションや語尾、表現などに、特徴があります。

特徴1 遠回しに伝える!婉曲表現

伝えたいことをストレートに伝えず、オブラートに包むように、婉曲的な言い回しをするのが特徴です。例えば、「それがいいと思います」と伝えたいときは、「それがええのと違いますやろか」(それが良いのと違いますか)と表現します。ほかにも「面白い人どすな」は「変わった人やな」、「好きにしゃはったらよろしいやん」は「巻き込まんといて」といった意味を暗に示しています。

特徴2 形容詞を重ねる「畳語」、「長音語」、「ウ音便」など、ユニークな表現も

「高い」ことを「高い高い」、「熱い」ことを「熱い熱い」と、重ねて表現します。これを「畳語」と言います。また、蚊のことを「かあ」、木のことを「きい」、毛のことを「けえ」といったように、母音を伸ばして発音する「長音語」も京ことばの特徴です。「丸い」を「まるう」、「辛い」ことを「かろう」、語中・語尾の音が「う」の音になる「ウ音便」といった表現もあります。

特徴3 表現の違い

京ことばには、標準語の単語とそのまま置き換えられるものもありますが、標準語にはない独自の表現もあります。例えば、「おおきに」は「ありがとう」、「いけず」は「意地悪」、「ほかす」は「捨てる」という意味で、標準語と全く異なる表現の一例。また、「しなさい」という命令形の場合は「しよし」となります。

特徴4 イントネーションの違い

イントネーションが独特です。例えば、「ありがとう」。標準語だと「り」にアクセントがつきますが、京ことばの場合、「とう」を強くします。全体的に抑揚があり柔らかな印象のイントネーションなので、聞いていて、ゆっくりと上品で落ち着いた印象があります。

特徴5 語尾の違い

敬語を話す場合、「語尾」にも特徴があります。標準語では、敬語で相手の行動を示す際は、動詞に「される」をつけます。しかし、「京ことば」では、「される」ではなく、「しはる」をつけます。

また、「やす・おくれやす」をつけるのも一般的です。「掃除しておくれやす」は「掃除をしてください」という意味になります。標準語よりも柔らかな印象を受けませんか?

さらに「~へん」など、動詞のあとに、「へん」が付いた場合は、「行かへん(下がり調子)」は「行かない」という意味ですが、「行かへん?(上がり調子)」の時は「行きませんか?」という問いかけ表現になります。

特徴6 ひとつの言葉がいろいろな意味を持つ

いろいろな意味を持つ言葉があるのも特徴のひとつ。例えば、以下の言葉は4~5つの意味を持ちます。

「えらい」

    1.大変な、はなはだしい、ひどい
    2.とんでもない
    3.偉い、立派な
    4.しんどい、つらい、苦しい

    「せんど」

    1.たくさん
    2.十分に
    3.毎度
    4.長時間

    「あかん」

    1.いけない
    2.効果がうすい
    3.役に立たない
    4.弱い
    5.開かない

    特徴7 美しく雅な京ことば

    京都の人たちは、粗雑な言葉遣いを避け、丁寧で上品な言葉遣いを使うことを心がけています。命令表現の「待ってて!」は、語尾に「や」をつけ、「待っててや」となり、柔らかな印象になります。

    「おおきに」や「はんなり」など、使ってみたい「京ことば」18選

    京都

    ここでは、京都滞在の際に、使ってみたい実用的な京ことばを紹介します。

    挨拶と基本的な会話フレーズ5選

    おはようおかえり


    1.おはようおかえり/意味:いってらっしゃい

    登校する子ども(学生)に対して、見送る側の母や父は標準語では「行ってらっしゃい」と言いますが、京都では、「おはようおかえり」と言います。「おはよう」は「早く」の意味で、「早く平穏無事に帰ってきてくださいね」という意味が込められています。通勤する人には「おはようおかえりやす」と「やす」をつけて丁寧に表現します。

    2.おたのもうします/意味:お願いします

    「おたのもうします」は、「お願いします」の意味です。「頼む」は、手を合わせて「祈る」ということから。「これからもおたのもうします」といったように使います。今でも花街で舞妓や芸妓が日常的にもよく使っています。

    3.めっそうな/意味:どういたしまして

    「どういたしまして」「とんでもない」の意味。「よう、勉強できはるさかい。うらやましいわ」と言われ、「めっそうな」などと使います。「法外な」「ありえない」の意味の「めっそうもない」は、「めっそうもない、こんな立派なもんいただいて、どないしょ」といったような使われ方をします。

    4.すんまへん(/意味:すみません

    「いつもお世話になりすんまへん」、「お先に失礼してすんまへん(」などと使われ「すみません」の意味があります。「心が澄まない」の意味から、謝罪する時以外に、感謝する時にも使われます。

    5.かんがえときます/意味:やめておきます

    標準語では、「考えておきます」の意味ですが、京ことばでは「やめておきます」の意味。直接的に伝えることを控え、遠回しに、「考えておく=やめておく」ことを伝えています。

    6.はんなり/意味:気品があり華やかなさま

    関西エリア以外では、「はんなり」と聞くと、「優雅、のんびりとした」といったイメージを持つ傾向にありますが、京ことばでは「気品があり、明るく華やかな」といった意味。「はんなりした着物の柄あわせ」など、衣装などを形容する際に使われることが多くあります。

    お店や観光地で役立つフレーズ7選

    おいでやす


    1.おいでやす/意味:いらっしゃいませ

    京都にあるお土産物店に入ったときに耳にする言葉。「ようこそいらっしゃいました」という意味です。

    もっと丁寧な表現にするときは、「おこしやす」となります。ほかに、「おいでやしとくれやす」「ようこそおこしやしとくれやした」という言い方もあります。

    「おいでやす」と同じように、「お読みやす」「お書きやす」など、接頭語「お」と接尾語「やす」をはさむ敬語表現は京ことばに多く見られます。

    2.おこしやす/意味:いらっしゃいませ(より丁寧)

    「おいでやす」よりも丁寧な表現。「おこしやす」は、「ようお越しやした」という言葉を略したもので、より丁寧な「いらっしゃいませ」です。事前に予約をしてくれていた客や来店を待ち望んでいた相手に対して使われ、より歓迎の気持ちを表す表現です。

    3.おおきに/意味:ありがとう

    感謝の意味を示す「おおきに」。もともとは「おおきに(大変、大いに)ありがとう」でしたが、「ありがとう」を略して「おおきに」だけで「ありがとう」の意味になりました。

    4.うつる/意味:似合う、調和する

    洋服屋で定員さんに「その洋服の柄はよううつってますな」といわれたら「よく似合っていますね」の意味。「うつる」は、「物の姿がそっくり他の物に反映する」、「目に映ずる」の意味から、「よく似合う」の意になります。

    5.ごめんやす/意味:こんにちは

    「ちょっとすみませんが」といった簡単な挨拶言葉。「ごめんやす、奥さんいらっしゃいますか」といったように、家や店に入るとき出るとき、人の前を横切るときなどにも使われます。「すんまへん」より丁寧な表現。

    6.よろしゅうおあがり/意味:お召あがりくださいまして、ありがとうございました

    食事をいただいたあと「ごちそうさま」と言われたときに、返す言葉。「お召あがりくださいまして、ありがとうございました」といった意味が込められています。

    感情や状況を表現するフレーズ5選

    かんにんえ


    1.かんにんえ/意味:ごめんね。許してください

    「ごめんね」、「許してください」の意味を示す「かんにんえ」。「えらい遅うなってしもて、かんにん、かんにん」といったように「え」をつけずに、使われることもあります。

    2.おきばりやす/意味:がんばってください

    「よう勉強しはりますな、おきばりやす」は、「よく勉強しますね。がんばってくださいね」の意味。もともとは「気張る」=「息をつめて力むこと」の意味が由来とされています。「おいでやす」や「おこしやす」と同じく、「お~やす」をつけた敬語表現。

    3.うれこい/意味:うれしい

    「明日は誕生日。うれこいな」は、「明日は誕生日会。嬉しいな」という意味に。「~こい」は、「ひやこい(冷たい)」、「まるこい(丸い)」、「こまこい(細かい)」など、ほかの形容詞にも使われます。

    4.ようすする/意味:気取る

    「あの人は男の人の前では、ようすするのや~」などと使います。様子は「容姿なりふり」の意味があり、「あの人は男の人の前では、気取るわね」の意味です。

    5.へたばる/意味:疲れて倒れる、座り込む

    「山登りの途中でへたばってしまったわ」などと使います。「へた」は「平らなこと」、「ばる」は「張る」。「へたる」、「へちゃばる」とも使われます。「風邪をひいてへたってる」といったときにも使われます。

    「ぶぶ漬けでもどうどす?」に隠された本音と京都の文化

    ぶぶ漬け

    現在では、「ぶぶ漬けでもどうどす?」と言われたら、長居せずに、「早く帰ってほしい」ということを伝える表現と言われることも多いのですが、もともとは、そういった意味ではありません。

    京都では人を家に招待するときは、きちんとしたお料理を用意するのが礼儀とされていました。しかし、準備ができていないと失礼になってしまうので、「ぶぶ漬け(お茶漬け)を食べませんか?」と伝えることで、「私は用意ができていません。十分なもてなしができないです」と遠回しに、申し訳ない気持ちを伝えています。そして、招かれた方も相手を気遣い、「ではまた今度」と、帰路につきました。お互いが配慮しあう「心遣い」が感じられる優しいやりとりといえます。

    「よろしい」は「どうでもよい」!?

    京ことばには、言葉そのものの意味を捉えるのではなく、言葉の裏を知っておく必要がある言葉があります。例えば、「よろしい」。共通語では「よい」という意味ですが、京ことばでは、「どうでもよろしい」という意味もあります。「どうでも構わない」「どうでもよい」という意味を伝えるときに使われています。

    ほかにも、ありがとうの意味の「おおきに」は、誘いや提案に対して、断りを言うNOの意味合いもあります。「誘ってくれてありがとう、でも結構です」という相手を気遣った断り文句として「おおきに」が使われることもあります。

    他にもこんな「婉曲表現」にご注意!

    例えば「お体の具合はどうですか」「ぼちぼちですわ」というやりとりに関して、「ぼちぼちですわ」には、「元気であるか、元気でないか、あまり具体的に答えたくない」という意味が込められています。

    ほかに、「面白い人どすな」と言われたときは、「面白い人ですね」と褒めるというより、「変わった人ですね」という意味が込められています。「好きにしゃはったらよろしいやん」は「「好きにしてください」という意味よりも、「そんなこと聞かれても知らんし。巻き込まんといて」という意味が込められています。

    「一見さんお断り」の本当の意味とは?京都のおもてなし文化と言葉の関係

    「一見さんお断り」という言葉。面識がない人の入店はNG、何度も訪れたことがある人、または、すでにお店の常連客などに紹介された人しか入店できないという意味です。そう聞くと、「閉鎖的だ」と感じる人も多くいると思います。しかし、実際は、事前に「来訪者が好むもの、苦手とするもの」を把握していなければ、「心のこもったおもてなしはできない」というお店側の思いが込められています。時には、紹介者に、来訪予定の「一見さん」が好む食べ物、興味・関心などを聞いておき、提供する料理だけでなく、器、掛け軸、調度品なども、来訪者の好みにあわせて選びなおすこともあります。

    「一見さんお断り」の言葉の裏には、「一見さんであっても、心を通わせることができるような最高の接待をしたい」という清らかな気持ちがあります。

    「仕出し屋」さんは、出張料理人だった!?

    今現在、使われている「仕出し」の意味は、お店とは別の場所に料理を運ぶことです。特に大人数での会食やお祝い事、法事などオフィシャルな場面で、弁当や会席料理などを指定場所に届けてもらうことが多くあります。しかし、京都では、かつて、来客者に心のこもった歓待をしたいという思いから、料理人を家に呼び、来客者の好みにあった料理を提供してもらうことを「仕出し」と言っていました。今でいう、いわば、出張料理人です。

    「一見さんお断り」同様、「仕出し」のシステムも、来客者に失礼のないように、最高のおもてなしをしたいという京都人の思いがあるのです。 

    【番外編】「京ことば」が登場するおすすめドラマ・映画・アニメ5選

    鴨川

    最後に作品を通して「京ことば」に触れることができるおすすめの作品をご紹介します。

    「舞妓さんちのまかないさん」

    漫画発表期間:2016年12月28日~

    京都の置屋で賄い作りの仕事をする少女・キヨが主人公。花街で共同生活をする舞妓たちの日常が描かれています。NHKEテレで「アニメ」、Netflixで「ドラマ」としても放映されました。

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    「であいもん」

    漫画発表期間:2016年4月~

    父が入院したため、10年ぶりに和菓子屋を営んでいる京都の実家へと帰った納野 和(いりのなごむ)が主人公。しかし、任されたのはお店の跡継ぎではなく、跡継ぎと呼ばれる少女・雪平一果の父親業でした。ほのぼのとした心温まるストーリーです。

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    「陰陽師Ⅰ&Ⅱ」

    劇場公開日:2001年10月6日、2003年10月4日

    陰陽師・安倍晴明の活躍を描いた伝奇小説「陰陽師」をオリジナルストーリーとして映画化したもの。平安時代を舞台に、陰陽師である安倍晴明と武士の源博雅の2名が、難しい事件に挑みます。

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    「舞妓はレディ」

    劇場公開日:2014年9月13日

    京都を舞台に舞妓になるために頑張る少女を描く。歌やダンスを交えがミュージカル仕立てのエンターテインメント映画。周防正行監督によるノベライズ本も出版された。

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    「ちょこっと京都に住んでみた。」

    放映:2022年

    「観光地に一切行かない京都案内」と「住んでいる人しか知らない京都」をコンセプトに、東京でデザイナーを目指しながらも、挫折した女性が京都の町家に住む大叔父のもとで過ごし、心がほぐれていく様子を描いたドラマ。

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    監修:棚橋れい子
    京都にある市民団体「京ことばの会」の代表。千年以上の歴史がある生きた京ことばを、次世代に受け継ぎたいと、毎月第2・4火曜、例会を実施。「京ことばサロン」の開催、小学校、中学校、大学、児童館、福祉施設などでの出前講座や、ラジオ番組「週刊 京ことばニュース」、YouTube「まんが de 京ことば 」など幅広い方法で、「京ことば」の発信を続けている。

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