広島の食の楽しみといえば、お好み焼きや牡蠣などの新鮮な魚介が思い浮かびますが、実は「日本酒のまち」としても知られているのをご存じでしょうか。広島県東広島市の西条(さいじょう)は、兵庫の灘(なだ)、京都の伏見と並ぶ日本三大酒どころのひとつ。まちの中心にある「西条酒蔵通り」には、今も歴史ある酒蔵が立ち並び、まち全体が日本酒の香りに包まれています。
今回は、日本酒ファンはもちろん、広島観光で文化体験を楽しみたい方におすすめの西条の魅力をご紹介。広島からのアクセス方法や、なかでも有名な賀茂鶴酒造(かもつるしゅぞう)の見学レポート、さらに周辺のお土産や名物グルメ「美酒鍋(びしゅなべ)」まで、旅の参考になる情報をまとめました。
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7つの酒蔵が徒歩圏内に!西条酒蔵通りの魅力
日本酒のまち・西条の魅力を最も身近に感じられるのが「西条酒蔵通り」です。ここには7つの酒蔵が集まり、いずれも徒歩で巡れる距離にあるため、気軽に「酒蔵めぐり」を楽しめます。
歴史あるまち並み

白壁の土蔵や赤レンガの煙突が立ち並ぶ風景は、江戸時代から続く酒造りの伝統を今に伝えるものとして、イコモス(国際記念物遺跡会議)の「日本20世紀遺産20選」に選定されました。散策するだけでも昔ながらの日本の風情を味わえます。
個性豊かな7つの酒蔵

西条酒蔵通りは1km圏内に西から順に、山陽鶴酒造、白牡丹酒造、西條鶴醸造、賀茂鶴酒造、亀齢酒造、福美人酒造、賀茂泉酒造の7つの酒蔵が軒を連ねます。多くの酒蔵では試飲(利き酒)を実施しており、気に入った日本酒は併設のショップで購入することが可能。また、日本酒づくりについて学べる展示スペースを設けているところもあります。
年に一度!10月に開催される「酒まつり」

毎年10月には、西条酒蔵通りを中心に「酒まつり」が開催されます。1990年に始まったこの祭りでは、大酒林神輿が西条のまちを練り歩くほか、東広島市の銘酒をはじめ、全国各地約800種類の日本酒が味わえたり、「美酒鍋」などの名物グルメや特産品も楽しめたります。国内外から多くの人々が集まり、西条の酒文化が最も華やぐイベントです。
オバマ元大統領も味わった!「賀茂鶴酒造」で試飲と日本酒造りを学ぶ

今回「FUN! JAPAN」エディターが訪れたのは、西条を代表する老舗「賀茂鶴酒造」。1873年に木村和平氏が創業し、150年以上の歴史を誇る酒蔵です。

現在、酒蔵の一号蔵にはショップと展示コーナーがあり、日本酒を「味わう」だけでなく「学べる」工夫が充実しています。

展示コーナーでは実際に日本酒造りに使われている道具や工程を紹介する映像を上映しており思わず見入ってしまいました。

さらに仕込みタンクを混ぜる「櫂棒(かいぼう)」に触れて蔵人気分を味わえます。ここはフォトスポットとしても人気だそうですよ!
ショップには定番銘柄から季節限定酒まで幅広く揃います。フラッグシップの「大吟醸 特製ゴールド賀茂鶴」は、安倍晋三元首相とオバマ元米大統領の会食でも供された銘酒で、華やかな金箔入り。キリっとした辛口で、食事との相性も抜群だそうです。

有料試飲コーナーでは、この「特製ゴールド賀茂鶴」をはじめ、数種類の日本酒を飲み比べられます。スタッフの方に解説を聞きながら味わう一杯は、学んだ知識と重なり、より奥深い体験に。気に入った銘柄はその場で購入でき、TAX FREEにも対応。TAX FREEと併用はできませんが、海外発送も可能です。

さらにショップには、外国人観光客に特に人気だという日本酒仕込みの梅酒、広島アンデルセンとコラボした「賀茂鶴 日本酒ケーキ」などのスイーツ、蔵オリジナルのグッズも揃っており、西条ならではのお土産探しにもぴったりです。
賀茂鶴酒造 一号蔵直営店
住所:広島県東広島市西条本町9−7
営業時間:10:00~18:00
定休日:不定休
アクセス:西条駅から徒歩4分
公式HP:https://www.kamotsuru.jp/
酒蔵見学の後は名物「美酒鍋」に舌鼓!
日本酒のまち・西条を訪れたら、ぜひ味わいたいご当地グルメが「美酒鍋」です。鶏肉や砂ずり、豚肉、野菜を日本酒と塩・こしょうだけで仕上げるシンプルな鍋料理で、もともとは酒蔵で働く蔵人のまかない料理として生まれました。味付けが控えめなのは、利き酒に影響を与えないようにするためなんだそう。ここではおすすめの2軒をご紹介します。
佛蘭西屋(ふらんすや)

賀茂鶴酒造が運営する和洋食レストランです。ここでいただけるのは元祖「美酒鍋」。他にも広島牛ほほ肉を日本酒で煮込んだ料理など、日本酒と相性抜群のメニューが豊富です。

美酒鍋はランチから提供されているので、酒蔵見学と合わせて昼食に立ち寄るのもおすすめ。
佛蘭西屋
住所:広島県東広島市西条本町9-11
営業時間:【ランチ】11:30~14:30【ディナー】17:00~22:00
定休日:木曜日、第2・4月曜日
アクセス:西条駅から徒歩3分
公式HP:https://www.france-ya.jp/
蔵処 樽 -kuradokoro TARU-

東広島の充実した日本酒のラインナップを誇る居酒屋。

こちらの美酒鍋は、自分で作って味わうスタイルで、体験型の楽しさも魅力です。昼には「コメカラ定食」も提供。コメカラとは、西条酒と米粉を使った唐揚げのことで、西条ならではの隠れ名物グルメとして人気です。
蔵処 樽 -kuradokoro TARU-
住所:広島県東広島市西条栄町7-48
営業時間:【ランチ】11:30~14:00【ディナー】17:00~23:00
定休日:不定休
アクセス:西条駅から徒歩3分
公式HP:https://higashihiroshima.wixsite.com/kuradokorotaru
酒蔵通りと一緒に訪れたい西条おすすめスポット
日本酒のまち・西条には他にも日本酒ゆかりのスポットが。まち歩きの途中で立ち寄れば、旅の楽しみがさらに広がります。
御建神社(みたてじんじゃ)

賀茂鶴酒造のすぐそばにある神社で、西条の酒造りと深いつながりを持つ神社です。

杜氏や蔵人たち(酒蔵で酒造りを行う人々)も参拝してきたとされ、境内には大きな酒樽も。日本酒のまちらしい雰囲気を味わえます。
御建神社
住所:広島県東広島市西条町西条268
アクセス:西条駅から徒歩2分
公式HP: https://mitate.or.jp/
お菓子の蔵さくらや 西条駅前本店
地元で愛され続ける老舗和菓子店。
看板商品の「樽最中」は、大吟醸酒と吟醸酒の酒粕と西条酒入りの白あんと、北海道大納言の粒あんの2種類。もちろんおすすめは白あんです。ほんのり香る日本酒の風味と優しい甘さが魅力。
また、樽の形をかたどり、酒蔵の名前が記された「樽せんべい」もかわいい。
お菓子の蔵さくらや 西条駅前本店
住所:広島県東広島市西条本町11-27
営業時間:9:00~18:00
定休日:無休
アクセス:西条駅から徒歩2分
公式HP:https://www.sakuraya-kashi.com/index.html
西条本町歴史広場

白牡丹酒造延宝蔵東側に位置する多目的広場。東屋とベンチが備わっており、酒蔵通り散策の合間の休憩場所としてぴったり。

こちらの東広島市の観光マスコット「のん太」がデザインされたポストから、観光案内所で販売している「のん太のご当地ポストカード」を投函すると、風景印が押印されるんだとか!
西条本町歴史広場
住所:広島県東広島市西条本町9-9
アクセス:西条駅から徒歩5分
西条が「日本三大酒どころ」と呼ばれる理由

西条は、兵庫の灘、京都の伏見と並び「日本三大酒どころ」と呼ばれていることをご存じでしょうか?その背景には、酒造りに欠かせない 水・米、そしてそれを活かす「人の努力」がありました。
豊かな井戸水
西条の酒造りを支えてきたのは、龍王山から流れる伏流水をくみ上げた井戸水です。日本酒の多くは硬水を使いますが、西条ではやわらかな口当たりの「軟水寄りの中硬水」を使うことが特徴。これにより、西条の酒はまろやかで香り高い味わいに仕上がります。
良質な米
広島県は古くから米どころとして知られ、日本酒に適した「八反錦」などの品種が栽培されてきました。地元で育った酒米を安定的に確保できたことは、西条の酒造りを大きく支える要素となっています。
技術革新と造り手の努力
水と米に恵まれていた一方で、大きな課題もありました。
軟水の弱点を克服
軟水は硬水に比べて発酵が不安定で腐敗しやすいという問題があり、多くの酒蔵が悩まされていました。これを解決したのが東広島市安芸津町の酒造家・三浦仙三郎氏です。研究を重ね、「軟水醸造法」を確立することで、広島の日本酒を全国的に知られる存在へと押し上げました。
精米技術の進化
酒米が豊富にあっても、当時は水車による精米が主流で、西条には大きな川が少なく効率的な精米が困難でした。その悩みを解決すべく、日本初の「動力式精米機」を生み出したのがサタケの創業者・佐竹利市氏です。さらに賀茂鶴酒造の創業者・木村和平氏の依頼を受けて「研削式精米機」を開発。これにより当時としては驚異的な「精米歩合60%」を達成し、西条の酒造りはさらに高品質へと進化しました。
旅の拠点となる「西条駅」:西条へのアクセス方法

広島から西条へのアクセスは電車で35分!
西条は、広島市内から日帰りで気軽に訪れることができる日本酒のまちです。拠点となるのは JR西条駅。広島駅からJR山陽本線に乗って、約35分で到着します。

西条駅に着いたら、酒蔵通りまでは徒歩わずか3分ほど。改札を出て南側に進むと、白壁の建物や赤レンガの煙突が見えてきます。
広島空港からは直通バスの利用が便利
広島空港から直接西条へ行くなら、「西条エアポートリムジン」を利用するのがおすすめ。広島空港とJR西条駅北口を結ぶ空港リムジンバスで、所要時間は約25分です。車内アナウンスは多言語対応なので、海外からの旅行者でも安心して利用できます。
観光案内所で情報収集を

西条駅の改札階である2階には 「東広島市観光案内所」 があります。西条酒蔵通りにある7つの酒蔵の営業時間や訪問時にどんな体験ができるかなども詳しく教えてくれるので、駅に着いたらまずはここに立ち寄るといいでしょう。
日本語に加え、英語・中国語など多言語のマップやパンフレットが用意されています。
東広島市観光案内所
営業時間:9:00〜18:00
定休日:なし ※年末年始を除く
コインロッカー情報

駅のコインロッカーは観光案内所の裏手にあり、数は28個と多くはありません。「FUN! JAPAN」エディターが訪れた平日には余裕がありましたが、混雑が心配な場合は広島駅で荷物を預けてから西条へ向かうといいでしょう。
また、広島空港から向かう場合は、スーツケースなどの手荷物を広島空港から広島市等の対象ホテルへ当日に配送する「手ぶら観光サービス」も、有料で利用できます。多言語対応もしているので、こちらを活用するのもおすすめです。
広島から電車でわずか35分、日本酒のまち・西条は気軽に立ち寄れる観光地。酒蔵めぐりや美酒鍋を通して、日本の伝統文化にふれてみてはいかがでしょうか?
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