日本独自の文化!?アイドルや歌手=「推し」を追いかける「推し活」ブームとは

日本では「婚活(結婚活動)」や「就活(就職活動)」など、様々な目的とした「○活」が行われている。今回は、近年日本で話題の「推し(おし)」と「推し活(おしかつ)」についてご紹介。初めて聞く人もこの記事さえ読めば、今日本で話題となっている2つのワードが丸わかりだ!

「推し」とは?「推し」の対象の定義は?

「推し」とは、アイドルファン界隈で発祥した俗語で、アイドルグループなどのお気に入りメンバーを、そのファンが「推しメン(一推しのメンバー)」と呼んでいたことが語源と言われている。2000年代中盤からは、AKB48を筆頭にアイドルグループや様々なアーティストが「推し」という日本語がタイトルに入った曲をリリース。近年では2021年に長編小説『推し、燃ゆ』が日本で最も栄誉ある文学賞の芥川賞を受賞。「推し」という言葉が一般でも使われるほどになっている。

かつてはアイドルファン界隈でしか通じなかった言葉だったが、今や実在する人物から、キャラクター、人間以外の物事まで、幅広いジャンルや対象において使われている。ただ好きなだけでなく、「応援したい!」「周りにお薦めしたい!」という気持ちさえあれば、対象が何であれすべて「推し」と表現できるようになったのだ。

「推し」の一例

実在する人物創作物
人間以外のもの
歌手
漫画
動物
アイドル
アニメキャラクター 
鉄道
スポーツ選手
ゆるキャラ
仏像
戦国武将
ボーカロイド 
食べ物

株式会社ジェイアール東日本企画が実施した「推し活・応援広告調査2022(*1)」によると、10代〜40代男女の57.4%が「『推し』がいる」と回答。中でも10代~20代女性の約7割、10代~20代男性の6割以上が「推し」を持ち、言葉自体が若者に広く認知されていると言える。

*1:
調査対象:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県在住の15~49歳男女17,226名
調査時期:2022年12月16日~2023年1月5日
調査機関:株式会社ジェイアール東日本企画 jeki応援広告事務局「Cheering AD」
調査方法:インタネットアンケート

「推し」を応援する「推し活」とは?

「推し」を語る上に、「推し活(おしかつ)」(「推し事(おしごと)」とも言う)も欠かせない。

「推し活」の定義には諸説があるが、あらゆる「推しを応援する活動」として表現されることが多い。推す対象の代表的な例として下記がよく挙げられる:

「推し」別の「推し活」(一例)

アイドルCD購入、ライブ・握手会参戦
俳優
ドラマ・映画鑑賞
アニメ
聖地巡礼、ロケ地巡り
鉄道
鉄道博物館見学、観光列車に乗車
動物
動物園・水族館巡り

関連記事:

消費者庁が発表した「令和3年度消費者意識基本調査(*2)」の結果を見ると、「有名人やキャラクター等を応援する活動にお金を使う」と答えた人の割合は、約10.3%に留まる一方、音楽フェスやコンサートといった参加型の体験あるいはイベントにお金をかけている人の割合は約14.6%となっている。どちらの項目も10代後半と20代をメインとする若い世代が1位、2位を占め、年齢を増すごとに割合が低くなる傾向を示した。

*2:
調査対象:全国15歳以上の日本国籍男女5,493名
調査時期:2021年11月8日~11月23日
調査機関:消費者庁
調査方法:郵送アンケート(WEB 回答併用)

新たな旅の楽しみ方も!「推し活」の関連ビジネスを取り入れる観光業界

「推し活」の経済効果が年々と大きくなると言われる中、コロナ禍で大打撃を受けた観光業界を含め、様々な業界にビジネスチャンスが転がっている。ここからは、観光業界における2つの事例を見ていこう。

東京ドームホテル:コンサートの聖地が見渡せる「推し活宿泊プラン」が大ヒット

大人数のイベントに思うように行けなかったコロナ渦に、ホテルはプチ旅行気分が味わえる場所として新たな役割を果たす。

「推し」の誕生日などの記念日にホテルの一室を借り、プロジェクターで映像を鑑賞したり、部屋をお好みの装飾にカスタマイズしたりする「推し活宿泊プラン」が人気を呼んでいる。中でも東京ドームホテルが販売する、部屋から「コンサートの聖地」東京ドームが見渡せる宿泊プランは受付を何度も延長したほど大人気で、期間中は満室状態がずっと続いていたという。

JR東海:動物園や駅にまつわる「推し旅」に申し込みが殺到

JR東海が 2021年に始めた「推し旅アップデート」も、「推し活」に特化した旅行商品として注目を集めている。

例えば愛知県の動植物公園で飼育している象の「象主」になれるプランでは、1人30万円と高額な企画にもかかわらず、計46人が応募したという人気ぶり。最終列車が終了した後の真夜中の京都駅の裏側を見学できるバックヤードツアーも、定員の10倍の応募が殺到し抽選になったほど、「駅推し」の人から高い人気を誇った。

「推し活」が日本の職場にも変化を。「推し休暇」までが登場!

「推し活」の普及は、日本の職場にまで変化を与えている。例えば、北海道札幌市のとある保育園が「推し休暇」を新設。法定の有給休暇に加え、「推し活」に使える有給休暇として最大で10日間を付与するという制度。

また、テレビCMの制作などを手がける株式会社ひろろも同じような「推し休制度」を採用し、ライブやイベントに応じた休暇の取得はもちろん、突発的なイベントがある場合は当日の早退まで認めている。さらに、国内外のライブへ参加する場合、最大10,000円の補助金が支給されることも!このように、従業員がより気軽に「推し活」ができる制度を導入する企業が増加しているのだ。

「推し活」がもたらす心理的メリットもたくさん!

経済や働く環境への影響のほか、「推し活」のもう1つのメリットは推す側の心を潤すこと。

株式会社ファイントゥデイ資生堂の「推しのいる生活に関する実態調査(*3)」によると、「推し活」経験者の約9割は「人生に楽しみができた」または「人生が豊かになった」と証言。推しができたことで毎日が充実したと感じている人や、ポジティブになったと実感する人も多いようだ。

また、「推し活」は脳の活性化にも効果が期待できるという、医学的なメリットを訴える脳内科医も。適度に楽しめば、心の栄養となり活力源になることだろう。

*3:
調査対象:「推し」がいる15歳~59歳の男女500名
調査時期:2022年4月28日~5月2日
調査機関:株式会社ファイントゥデイ資生堂
調査方法:インタネットアンケート

現在、日本でブームとなっている「推し活」。FUN! JAPAN編集チームの中にも、仕事を頑張りながらミュージシャンやお城など、様々な人やものを推しているメンバーがいる。皆さんの国にも、似たような「推し」や「推し活」の文化があるだろうか?ぜひコメント欄で教えてください!

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