1枚の絶景から始まる旅:冬の富山、「五箇山ライトアップ」

日本を旅するきっかけは、SNSで見かけた1枚の写真かもしれません。本連載「1枚の絶景※から始まる旅」では、日本の美しさを知り尽くした絶景プロデューサー・詩歩さんと共に、その写真が撮られた場所の魅力や、旅のヒントを深掘りしていきます。

今回お届けするのは、雪深い富山県の山間に位置する「五箇山(ごかやま)」の風景です。寒さを忘れるほどに温かく、幻想的な光に包まれた日本の原風景をのぞいてみましょう。

※「絶景」は英語では “Zekkei” と表現されることもあり、詩歩さんは “Breathtaking sights” という言葉で世界に紹介してきました。単に美しい風景というだけでなく、思わず息をのむような瞬間を指す言葉です。

今回の1枚:冬の富山、「五箇山ライトアップ」

幻想的な雪の夜。世界遺産・五箇山が光に包まれる瞬間

今回の1枚:冬の富山、「五箇山ライトアップ」
五箇山 菅沼合掌造り集落

真っ白な雪に覆われた急勾配の屋根から、窓明かりが優しく漏れ出し、闇夜の中に集落が浮かび上がる様子は、まるで日本の昔話の世界に迷い込んだかのよう。近隣にある岐阜県の白川郷に比べて観光客が比較的少なく、静寂の中で厳かな絶景を堪能できるのも、日本・富山県の五箇山ならではの贅沢な時間です。

絶景写真by 絶景プロデューサー、詩歩/Shiho

『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』プロデューサー。著書シリーズは累計63万部を突破。SNSの総フォロワー数は100万人を超え、現在は自治体や企業の観光振興アドバイザーとして、国内はもちろん世界中を飛び回り、美しい風景を発信している。

公式Instagram:@shiho_zekkei

絶景の旅、富山の五箇山へ

五箇山 相倉合掌造り集落

五箇山 相倉合掌造り集落

日本には、まだ多くの旅行者に知られていない地域があります。そのひとつが、日本海に面した北陸エリア富山県です。訪日外国人の訪問率はわずか0.6%、日本の穴場的観光スポットに興味のある人に最適です。

富山県の中でも特に、南西部に位置する五箇山。40の集落があり、その中の「相倉合掌造り集落」と「菅沼合掌造り集落」は、岐阜県の「白川郷」とともにユネスコ世界文化遺産に登録されています。

ここからは、詩歩さんが実際に現地を歩いて見つけた、五箇山の絶景の旅とその楽しみ方をご紹介します。

Day 1 09:20東京駅から新高岡駅まで新幹線

東京駅から北陸新幹線で新高岡駅へ向かい約3時間。駅弁を購入し、新幹線の車内で堪能するのが日本流の楽しみ方。車窓の景色は次第に白さを増し、雪に覆われた山あいの風景へと変わっていきます。

通常は新高岡駅から車で約50分で五箇山に到着しますが、今回は大雪により高速道路が通行止めとなり、想定よりも時間がかかりました。特に冬、前後に予定がある場合は、時間に余裕を持って行動しましょう。車以外の交通手段としては、高岡駅前または新高岡駅から世界遺産五箇山(相倉・菅沼)までを結ぶ「世界遺産バス」が運行しています。乗車時間は約1時間20~30分。運転しない観光者もアクセスしやすい便利なサービスです。

世界遺産バス
公式HP:https://www.kaetsunou.co.jp/company/sekaiisan/

Day 1 14:00 – 菅沼合掌造り集落

五箇山菅沼合掌造り集落

お昼過ぎには、五箇山の菅沼合掌造り集落に着きました!

集落から展望台までは約5~10分で歩ける距離ですが、エレベーターもあります。展望台に着くと、降り積もる雪に包まれた合掌造りが並び、まるで童話の世界のような幻想的な景色が広がります。

「合掌造り(がっしょうづくり)」とは、急勾配な三角形の茅葺き屋根を持つ日本の伝統的な建築様式のこと。標高の高い山間部に位置するこの地では、冬になると数メートルの積雪に包まれます。この三角屋根は、雪の重さに耐え、雪を下ろしやすくするための先人の知恵なのです。

五箇山菅沼合掌造り集落
五箇山菅沼合掌造り集落

集落の中を散策しながら、雪の上を歩く楽しさを味わい、雪と合掌造りに包まれた世界を撮影するのも良いでしょう。また、屋根の上に積もった雪も、軒先に連なる雪柱も、どこを撮影しても絵になりますね。集落内には、今も人々が実際に生活している家屋もあり、数百年にわたり受け継がれてきた暮らしが、ここでは今も続いているのです。雪に覆われた細い路地を歩きながら、時間がゆっくりと流れるような静けさを感じられます。

Day 1 14:30 - 五箇山食べ処 吾郎平

五箇山食べ処 吾郎平

合掌造りの建物内で食事ができる食事処が4軒あります。今回訪れたのは地元民が運営している「五箇山食べ処 吾郎平」。 詩歩さんおすすめの五箇山グルメは、名物の五箇山豆腐を使った「揚げとうふそば」と「五箇山豆腐刺」。通常豆腐といえば柔らかい食べ物ですが、この五箇山豆腐は”縄で縛っても形くずれしない”と言われるのも納得の堅さでした!

地元の方に聞いたところ、かつて「陸の孤島」と呼ばれた五箇山の独特な食文化が今も受け継がれているとのこと。「五箇山豆腐」や、清流で育った「岩魚(いわな)」の塩焼き、地酒「三笑楽」は外せません。大根や赤かぶなどの秋野菜もおすすめだそうです。 

五箇山食べ処 吾郎平
公式HP:https://www.goro-bei.com/

Day 1 17:00 – 五箇山ライトアップ

五箇山ライトアップ
菅沼合掌造り集落

冬には、相倉集落と菅沼集落の双方で、期間限定の「五箇山ライトアップ」が開催されます。開催日は年によって異なり、集落ごとに日程や演出内容も変わります。今回この絶景の写真を撮影した場所は菅沼集落でした。

真っ白な雪に覆われた急勾配の屋根から、窓明かりが優しく漏れ出し、闇夜の中に集落が浮かび上がる様子はとても幻想的で、まるで現実の世界ではないかのよう。また、近隣にある岐阜県の白川郷に比べて観光客が比較的少なく、静寂の中で厳かな絶景を堪能できるのも、五箇山ならではの贅沢な時間です。

五箇山ライトアップ

おすすめの撮影スポットは、集落を俯瞰できる国道沿いの歩道中腹がベスト。三軒の家の写り込みを避けつつ、中央付近から狙うとバランス良い構図になりました。また、背景の山々まで美しく見えるブルーアワーの時間帯を狙って撮影しました。

💡絶景プロデューサー・詩歩さんが教える、雪の絶景を撮影する・コツ(一眼カメラ向け)

①夜景を撮影するためには三脚を使った方がきれいに撮影できます。
②降る雪を丸い粒で撮影したい場合は、フラッシュもしくはストロボを使いましょう!
③空の青さを強調したい場合は、ホワイトバランスを調整して、色味を青側に寄せてみましょう


Day 1 宿泊 – 五箇山合掌の里 荒井家

五箇山合掌の里 荒井家
五箇山合掌の里 荒井家

五箇山を訪れたらぜひ体験しておきたいのが、合掌造りの一棟貸しコテージでの宿泊。今回泊まったのは「五箇山合掌の里 荒井家」。実際に合掌造りの中で一晩を過ごせる貴重な体験です。宿泊することで、夜や朝の空いている時間帯に観光できるのもメリットです。

二階には迫力のある太い梁と柱が組まれた天井を間近に見ることができ、先人たちの知恵と技術に圧倒されます。夕食は提供されませんが、囲炉裏が備わっているため、地元で購入した岩魚などの食材を持ち込んで、炭火で焼きながらいただく温かいひとときを過ごせます。

五箇山合掌の里 荒井家
公式HP: https://www.gokayama.jp/stay/

Day 2 11:00 - 相倉合掌造り集落(展望スポット)

五箇山相倉合掌造り集落

相倉合掌造り集落

翌日は五箇山のもうひとつの世界遺産、相倉合掌造り集落へ。

菅沼集落と同様、相倉集落内にも民宿や食事処など観光施設が点在しています。さらに、菅沼集落の9棟に対して、こちらは20棟の合掌造り家屋が建ち並ぶ集落です。展望スポットへ向かう道を約5~10分登っていくと、眼下に広がるのは雪化粧された合掌造りの集落。菅沼集落とはまた違った風景が広がり、それぞれの魅力を楽しめます。

五箇山相倉合掌造り集落

様々な合掌造り家屋の外観を楽しみながら、雪と合掌造りを背景に写真を撮りたい方には最適です。また、豪雪地帯として積雪量が伝わりやすくなるよう、ワンポイントになる色の服装を選ぶのもポイントです。

Day 2 13:00 - 庄川峡:遊覧船

 庄川峡遊覧船

さらに、五箇山を訪れるなら、ぜひセットで訪れたいのが「庄川峡(しょうがわきょう)」。かつて五箇山が陸の孤島だった時代、冬の唯一の交通手段は庄川を渡る船でした。

現在は「庄川峡遊覧船」として、四季折々の渓谷美を楽しむことができます。特に冬、水墨画のような雪景色の中をゆっくりと進む遊覧船は、日常を忘れさせてくれるほどの美しさです。

💡旅のプロJTBからのTIPS


庄川峡遊覧船でしか行けない秘境の大牧温泉一軒宿「大牧温泉観光旅館」があります。もし秘境に興味があれば、庄川峡遊覧船の「大牧温泉コース」で大牧温泉に行ってみてくださいね♪

大牧温泉観光旅館
公式HP:https://www.oomaki.jp/

Day 2 15:00 - 19HITOYASUMI:五箇山ぼべらモンブラン

五箇山ぼべらモンブラン

旅の最後に立ち寄りたいカフェ。天井が高く、ゆとりのある空間で、手作りスイーツと自家焙煎コーヒーを楽しめます。

おすすめは、五箇山特産のかぼちゃ「ぼべら」を使ったモンブラン。合掌造りをモチーフにした見た目が可愛いのも魅力です。やさしい甘さの中に、ほんのりとラム酒が香る大人向けの味わいです。

19HITOYASUMI
公式HP:https://19hitoyasumi.shop/

絶景プロデューサー・詩歩さんが語る「五箇山」の魅力

吹雪の中で待ち続けた、奇跡の「数分間」

五箇山菅沼合掌造り集落
菅沼合掌造り集落

今回の撮影、実は一筋縄ではいきませんでした。ライトアップが始まる17時、現地は吹雪に見舞われ、一度は撮影を断念して退避せざるを得ないほどでした。しかし、詩歩さんは諦めません。常に天気予報と外の様子をチェックし、「今だ」という一瞬の吹雪の止み間を逃さず、再び撮影ポイントへ戻ったのです。

「雪の降り方は、風の強さや粒の大きさによって、一瞬ごとに変わります。自分が思い描いた『理想の1枚』に出会うためには、最後の最後まで粘ることが何より大切です」

と詩歩さんは語ります。ライトアップが終了する20時まで氷点下の屋外で粘り続け、寒さに耐えながらシャッターを切り続けたからこそ、この静寂と温もりが同居する1枚が生まれました。

白川郷とは一味違う、五箇山・菅沼集落の「美しき日本の原風景」

五箇山相倉合掌造り集落
相倉合掌造り集落

詩歩さんは、今回撮影した五箇山の「菅沼集落」には、人の暮らしが今も息づく“生きた世界遺産”ならではの独特の魅力があると語りました。

「地形の特性を活かして集落が形成された結果、あのような美しい景観が生まれました。この景観の美しさは人工的に作られたものではなく、必然的な理由があってそのような形になったという物語性にも美を感じます。
そして最も重要なのは、今もあの茅葺き屋根の建物に実際に暮らしている人々がここにいるということです。住んでいる人の気持ちや、山深い場所での生活の大変さなど、そういった人間的な側面を感じることができます。観光地化されすぎていないからこそ、そうした本質的な部分をより深く感じられるのも、この五箇山という地域の大きな魅力です」。

また、これまでとは違う、五箇山の新しい一面を発見する旅となったと言います。

「これまでも冬の富山は何度か訪れていますが、今回訪れたのがとくに雪の多い日だったので、より住民の方の冬の暮らしぶりを感じることができました。そんな大雪の日でも、東京から新幹線とバスで簡単にアクセスしやすい五箇山は、雪景色を求めて来日する観光客の方におすすめできる場所だと再認識できました。」

五箇山

  • 住所:
    • 相倉(あいのくら)合掌造り集落:富山県南砺市相倉
    • 菅沼(すがぬま)合掌造り集落:富山県南砺市菅沼
  • アクセス:
    • 小松空港から:【バス】小松空港リムジンバスで金沢駅まで約40分、金沢駅から北鉄バス(要予約)で約1時間
    • 東京駅から:【電車・バス】北陸新幹線で新高岡駅まで約3時間、新高岡駅から世界遺産バスで「菅沼」または「相倉口」まで約1時間5~20分
  • ライトアップ情報:
  • 日暮れ~20時(年5回ほど実施)
  • 日程など詳しくは公式サイトをご確認ください
    https://gokayama-info.jp/

富山の他おすすめ絶景・観光スポット

五箇山以外にも、富山には息を呑むような絶景が点在しています。

特におすすめなのが「雨晴(あまはらし)海岸」。海越しに3,000メートル級の立山連峰を望める世界でも稀有なスポットで、冬の晴れた日には冠雪した連峰が青い海に浮かぶ神々しい姿を拝めます。世界一美しいと称されるスタバがある「富岩運河環水公園」や、屋内の絶景としては「富山市ガラス美術館」もおすすめです。

山・海・街のすべてで極上の風景に出会えるのが、富山という地の奥深い魅力なのです。



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