東京、埼玉を洪水から守る秘密の「地下の神殿」:首都圏外郭放水路

地下の神殿 首都圏外郭放水路
画像提供:国土交通省江戸川河川事務所

埼玉県春日部市は、人気漫画・アニメ「クレヨンしんちゃん」の舞台として知られていますが、実は世界最大規模を誇る地下放水路「首都圏外郭放水路」のある街としても有名です。

「首都圏外郭放水路」は埼玉県東部に、浸水・洪水の被害を軽減するために作られた治水施設です。地下にたくさんの巨大な柱が林立する「調圧水槽」がまるで地下神殿のようで、SNSなどでも注目されています。今回は、首都圏外郭放水路の見どころと見学会のコースをご紹介します。

首都圏外郭放水路とは?

地下の神殿 首都圏外郭放水路
画像提供:国土交通省江戸川河川事務所

地盤が低い中川・綾瀬川流域は昔から水がたまりやすい地形で、浸水・洪水被害を常に受けていました。こうした被害を防ぐため、1993年に首都圏外郭放水路の建設が着工され、13年をかけて2006年に完成に至りました。地下50mに全長6.3km、内径約10mのトンネル が通っており、各河川から洪水を取り入れる 流入施設 や5つの立坑、調圧水槽などを結びます。

世界最大級の地下放水路で、2006年から2019年の12年間、洪水による被害が約1,271億円を軽減された効果があると想定され、多くの命や財産を被害から守ってくれました。

主要施設と防災の仕組み

画像提供:国土交通省江戸川河川事務所

首都圏外郭放水路の洪水を調整する仕組みは主に、

  1. 中小河川の洪水が「流入施設」と地下の第2~第5の「立坑」から流れ込み、
  2. 5つの立坑を繋ぐ全長6.3kmのトンネルを通し、
  3. 地下神殿と呼ばれる「調圧水槽」で水の勢いを弱め、
  4. 最後は巨大ポンプ(排水機場)から排水樋管を通して江戸川に排水します。

注目ポイント:①巨大竪穴「第1立坑」

地下の神殿 首都圏外郭放水路 第1立坑
画像提供:国土交通省江戸川河川事務所

各立坑の深さは約70m、内径約30m、アメリカの自由の女神も入れるほど巨大な円筒状立坑です。第1立坑はほかの4つの立坑と違い、「流入施設」を持っていないため、トンネル経由で各立坑から送られてきた水を溜めて、溜まってきた水を「調圧水槽」に流す役割があります。

見学会に参加すると、上から見下ろすことができます。立坑の巨大さからも溜められる水の量が想像でき、これまで水害の防止にどれほど役に立ってきたかを感じることができます。

注目ポイント:②まるで地下神殿⁉「調圧水槽」

地下の神殿 首都圏外郭放水路 調圧水槽
左/画像提供:国土交通省江戸川河川事務所

調圧水槽は地下22mに設置されており、長さ177m、幅78m。ちなみにこの地上は、芝生のサッカーグラウンドになっています。

調圧水槽の一番の特徴は、水槽内の随所にそびえ立つ巨大な柱です。1本につき奥行き7m、幅2m、高さ18m、重さは約500トンの柱が、なんと59本も!下から見上げると、ヨーロッパの古代神話に登場する宮殿のような、神秘的な光景が眼前に広がります。その美しさはまさに息をのむほど!

また、注目すべきは、この調圧水槽が、日本人歌手のMVや映画・ドラマのロケ地としても使われている点です。例えば、誰もが知る名作「仮面ライダー」シリーズの戦闘シーンや、大ヒット映画「翔んで埼玉」では、埼玉解放戦線の秘密のアジトとして劇中に登場しました。

入館無料の地底探検ミュージアム「龍Q館」

地下の神殿 首都圏外郭放水路 龍Q館
画像提供:国土交通省江戸川河川事務所

「排水機場」に併設されているミュージアム「龍Q館」は、放水路の機能や建設に関する、写真や映像展示などが楽しめる施設です。また、模型などの展示で、各施設やポンプの仕組み、第1~第5立坑から調圧水槽までの水の流れる構造などを、より楽しく、より分かりやすく学ぶことができます。

「立坑」、「調圧水槽」なども見学できる首都圏外郭放水路見学会とは?

地下の神殿 首都圏外郭放水路
画像提供:国土交通省江戸川河川事務所

実際に、この都圏外郭放水路を見学したい場合は、公式HPから予約して見学会に参加しましょう!有名な「調圧水槽」の見学はもちろん、「第1立坑」の作業通路から深さ70mもある底面を見下ろすことができます。迫力がある景色はまさに非日常!普段の生活では絶対にできない特別な体験を楽しみましょう!

コース内容によって、見学ルートと参加料金が異なります。合計4コースあります。

①インペラコース(2022年登場の新コース)

  • 参加料金:4,000円
  • コース内容:龍Q館展示室⇒第1立坑⇒調圧水槽⇒最奥部のインペラ(羽根車)
  • ※インペラが稼働中の際に立坑コースに変更

②立坑コース

  • 参加料金:3,000円
  • コース内容:龍Q館展示室⇒調圧水槽⇒第1立坑

③ポンプコース

  • 参加料金:2,500円
  • コース内容:龍Q館展示室⇒排水機場のポンプ室⇒調圧水槽
  • ※2022年11月現在休止中

④地下神殿コース

  • 参加料金:1,000円
  • コース内容:調圧水槽

※雨の後、施設が稼働中の場合はコース内容に一部の変更があります。
※龍Q館の展示室では治水施設の概要や仕組みの説明になります。

見学の予約はWEBサイトで申し込みができます。見学会は全て日本語のみ口頭で行われていますので、安全管理のため、日本語が通じない場合は外国語通訳などの同伴が必須になります。事前にご自身で手配しておきましょう。

東京から首都圏外郭放水路へのアクセス

東京駅から上野東京ラインや東北新幹線に乗車、または、新宿駅から湘南新宿ラインで、大宮駅まで東武野田線(東武アーバンパークライン)に乗り換え、南桜井駅に下車後、北口より「春日部市コミュニティバス(春バス)」かタクシーで龍Q館まで下車。本数が少ないのでご注意ください。

Spot Information

  • 名称:首都圏外郭放水路管理支所・庄和排水機場(龍Q館)
  • 住所:埼玉県春日部市上金崎720
  • アクセス:南桜井駅北口より徒歩約25~30分(約2.3キロメートル)、またはバス/タクシーで龍Q館に下車。
  • HP:https://gaikaku.jp/ 

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