
日本では、水晶や翡翠、メノウ、サンゴなどをはじめ、さまざまな天然石が採れます。磨き上げられた美しい天然石を、生き生きとした龍や鷹、茶道の器などに生まれ変わらせる伝統工芸は、今も昔も多くの人を魅了してきました。
そんな日本の天然石細工のなかで、経済産業大臣から伝統的工芸品に指定されている細工と、各都道府県から伝統工芸品に指定されている細工を合わせてご紹介。熟練の職人の手により一層魅力的な輝きを放つ、日本の天然石の世界を堪能しましょう。
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勾玉に装飾品…天然石は伝統工芸に欠かせない材料

日本では、古くから勾玉や管玉、かんざしなどの装飾品、仏像や仏具の飾り、刀の装飾などが作られてきました。これら伝統工芸品の多くには天然石が使われています。また、天然石の細工のため、現在も受け継がれている伝統的な彫刻や研磨技術があります。
日本で採掘され、愛されてきた天然石
火山が多く、豊かな自然に恵まれた日本では、さまざまな貴石が発見されてきました。そのなかで特に古代から愛されてきた天然石が、翡翠や琥珀、水晶、瑪瑙です。
翡翠 (ひすい)

翡翠は、日本で唯一「国石」に選ばれている天然石で、国内の最大の産地は新潟県糸魚川地域です。
緑色のものが一般的ですが、実は白、紫、青、黒など、さまざまな色の翡翠が存在します。というのも翡翠は単一鉱物ではなく、ヒスイ輝石を中心に複数の鉱物が集まってできており、その色合いは鉄やチタンなど微量成分によって決まるからです。
ちなみに、ヒスイ輝石自体は純白に近い色で、微量の鉄やクロムが含まれると濃い緑色になり、微量のチタンと鉄が含まれると薄紫色になります。
古くは縄文時代から装飾品として用いられ、糸魚川では世界でも非常に古い翡翠文化が栄えました。また、富山県の朝日町も翡翠の町として知られ、海辺で翡翠を拾う体験もすることができます。
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琥珀 (こはく)

琥珀とは、太古の樹木から分泌された樹脂が地中で数千万年かけて化石化した、植物由来の宝石です。
そのため、昆虫や植物などを閉じ込めた「虫入り琥珀」が見つかることもあり、学術的にも高く評価されています。琥珀といえば、ウイスキーのような黄色がかった茶色が思い浮かぶかもしれません。ですが、実は赤、白、青、緑など多彩な色が存在します。
日本では縄文時代から装飾品やお香、塗料、薬品として用いられてきました。日本の主な産地は岩手県久慈市で、約9000万年前の琥珀が産出されています。
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水晶

水晶は、鉱物学的には二酸化ケイ素が結晶化した「石英」と呼ばれる鉱物のうち、特に透明度が高く大きく成長した六角柱状のものを指します。
水晶にはさまざまな色があり、それぞれに異なる名称がつけられているのも特徴です。例えば、紫色はアメジスト、黄色はシトリン、ピンクはローズクォーツと呼ばれると聞くと、驚かれる方も多いのではないでしょうか?ほかにもさまざまな色が存在し、装飾品や工芸品として幅広く利用されています。
水晶は世界中で産出されますが、日本でも各地で見つかり、特に古くから良質な水晶の産地として知られている山梨県。また、日本では水晶を神聖なものとして信仰の対象にしてきた地域もあり、神秘的な石として大切にされています。
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瑪瑙 (めのう)

瑪瑙は、細かな石英の粒が集まった玉髄(ぎょくずい)の一種です。玉髄のうち濃い色で不透明なものは碧玉(ジャスパー)と呼ばれ、玉髄が層状に沈殿して縞模様を形成しているものが瑪瑙とされます。
含まれる微量成分や不純物により、白、青、赤、黄などの色が生まれ、古代から現代まで装飾品や置物、印鑑などに広く用いられてきました。日本の主な産地は北海道、富山県、石川県、茨城県、島根県などで、自然が生み出す美しい模様を楽しめる貴石です。
また、島根県の玉造温泉では、「しあわせ青めのう」という青めのうの原石を使った勾玉の小島があり、観光名所になっています。
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宝石珊瑚

宝石珊瑚は、水深100m〜600mの光の届かない冷たい深海で育つ海の宝石です。浅瀬の暖かい海で比較的早く成長し、珊瑚礁を形成する「造礁珊瑚」とは異なり、宝石珊瑚は1年に数ミリ程度しか成長せず、長い年月をかけて育ちます。
日本で主に産出されるのは、19世紀初頭以降に出回るようになったアカサンゴ、モモイロサンゴ、シロサンゴです。磨き上げると赤やピンク、白などの美しい艶を放ち、宝飾品として高い人気を誇ります。
日本に現存する最古の宝石珊瑚は、752年の東大寺大仏開眼会で聖武天皇と光明皇后の冠にあしらわれていた地中海産のもの。現在も奈良の正倉院に所蔵されています。
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伝統的工芸品に指定されている天然石の細工
2025年現在、経済産業大臣から伝統的工芸品に指定されている天然石の細工は、「甲州水晶貴石細工」と「若狭めのう細工」の2つ。それぞれの特徴や歴史、魅力を紹介します。
甲州水晶貴石細工 (山梨県)
甲州水晶貴石細工は、山梨県を代表する伝統工芸品に使われている細工であり、その起源は約1100年前、御嶽昇仙峡で水晶原石が発見されたことに遡ります。
発見当初は原石をそのまま飾っていましたが、江戸時代中期になると京都の玉造り職人に加工を依頼するようになり、江戸時代末期には京都から職人を招き入れ、鉄板に金剛砂(こんごうしゃ:ダイヤモンドのように硬い石を粉末にした研磨材)を巻きつけて研磨する技法を導入したことで、甲州独自の水晶細工技術が大きく発展しました。
最大の魅力は、透明感のある天然石に施される「透かし彫り」「深肉彫り」「線彫り」といった高度で繊細な彫刻技法にあります。これらの技法により、龍や馬の彫刻、香炉や茶道用の茶碗、指輪やブレスレットといった装身具など、多彩な作品が生み出されています。甲州水晶貴石細工を用いた作品は芸術性が高く、国内外で人気です。
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若狭めのう細工(福井県)


福井県小浜市で受け継がれる若狭めのう細工は、色鮮やかで神秘的な輝きを放つメノウならではの魅力にあふれた伝統工芸品に使われている細工です。
起源は奈良時代(710年~794年)に遡り、海の民・鰐族(わにぞく)が神社の前に「鰐街道」を築き、めのうを用いた装飾品を制作したのが始まりと伝承されています。
江戸時代中期には、200〜300度で原石を焼いて発色させる独自の「焼き入れ」技法が確立され、めのうの深い色合いと美しさが一層引き出されるようになりました。さらに19世紀には彫刻技術が加わり、現在のような精緻な工芸様式が完成しました。
モース硬度7という非常に硬いめのうを彫刻・研磨して仕上げる工程は、仏像や香炉、装身具など多岐にわたり、まさに職人技の結晶といえます。
都道府県指定の代表的な天然石の伝統工芸品4選
天然石を用いた伝統工芸品には、国(経済産業省)から指定されているもののほか、各都道府県から指定されているものもあります。ここでは、伝統工芸品に指定されている天然石の中から、4つの地域に注目します。
錦石(青森県)
錦石(にしきいし)とは、碧玉や瑪瑙、珪化木(けいかぼく)などの青森県各地で採れる、磨くと美しく輝く天然石の総称です。色彩と模様が錦と見間違うほど美しいことから、そう呼ばれています。
古くは縄文時代に勾玉として用いられ、江戸時代には「津軽玉」としてかんざしや根付に加工されて愛用されていました。かつては唐(中国)や天竺(インド)にも輸出されたと伝えられており、現在も多くの人々に愛されています。
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久慈琥珀 (岩手県)

世界有数の琥珀の産地である岩手県久慈市で作られてきた久慈琥珀。起源は古墳時代。朝廷に運ばれていた久慈産の琥珀が、古墳からも出土しています。 1645年(江戸時代)には盛岡藩の特産品に指定 。当時の京都や江戸(現在の東京)で高い評価を受けました。
そんな久慈市で採れる琥珀は、約9000万年前の恐竜がいた時代のもの。もちろん琥珀にはそれよりも古い時代のものもありますが、宝飾品や工芸品として価値があるもののなかでは、最古の琥珀です。主な製品は、時計やアクセサリー、インテリアなど。また、中生代白亜紀後期のタイムカプセルとしても注目されている虫入り琥珀も、久慈琥珀のさまざまな製品に用いられています。太古の世界を間近に感じられる貴石細工です。
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宝石珊瑚 (高知県)
日本の珊瑚漁発祥の地であり、宝石珊瑚産業の中心地でもある高知県では、深海に生息する希少な宝石珊瑚を用いた美しい工芸品がつくられています。
産出する珊瑚には、アカサンゴ、モモイロサンゴ、シロサンゴなどがあります。なかでも「血よりも赤い」という意味を持つ血赤(ちあか)サンゴは、鮮やかな赤色と艶やかな輝きが特徴で、特に人気の高い珊瑚です。
これらの宝石珊瑚は、熟練の職人によって丹念に磨き上げられ、宝飾品や和装小物、置物として幅広く愛されています。素材の個性を最大限に引き出す高知独自の加工技術は世界的にも高い評価を受けており、代々受け継がれてきた技術と美意識が詰まった逸品です。
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五島さんご (長崎県)
五島さんごは、長崎県五島列島の五島富江町で加工される、長崎県知事指定の伝統工芸品です。起源は明治時代の1886年、五島列島沖で宝石珊瑚が発見されたことに始まります。現在も周辺の海域で採取されることがあり、資源保護を考慮しつつ加工が続けられています。
主な製品には、長年受け継がれてきた「五島彫り」によって生み出されるネックレスやブレスレット、帯留めなどの装身具、置物などがあり、繊細な技で数々の美しい作品が作り出されています。
日本の各地で採取される天然石と、天然石を美しく輝かせる細工技術の数々。次の日本旅行では、天然石に注目したショッピングやアクティビティを体験してみませんか?
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