皿屋敷<日本ホラーばなし>

夏(なつ)といえば、怖(こわ)い話(はなし)の季節(きせつ)ですね!
ゾッとするような怖(こわ)い物語(ものがたり)や、あるスポットで起(お)こった不思議(ふしぎ)な現象(げんしょう)、ミステリアスな昔話(むかしばなし)など、暑(あつ)さを忘(わす)れてしまうような “ひんやり体験(たいけん)”をしてみませんか?

今回(こんかい)は、日本(にほん)に古(ふる)くから伝(つた)わる、ある美女(びじょ)の怨念(おんねん)のお話(はなし)です。

皿屋敷 - お菊と10枚の皿、そして井戸の物語

今回紹介する「皿屋敷(さらやしき)」と呼(よ)ばれる物語は、各地に様々な伝説が残っており、ストーリー展開(てんかい)などがそれぞれ異(こと)なります。しかし、すべてに共通(きょうつう)するのは、主人公(しゅじんこう)のお菊(きく)と10枚(じゅうまい)の非常(ひじょう)に高価(こうか)なお皿(さら)、そして井戸(いど)のある邸宅(ていたく)です。

なかでも歌舞伎(かぶき)などの題材(だいざい)にもなっていて現在(げんざい)まで語(かた)り継(つ)がれているのが、東京(とうきょう)の怪談(かいだん)・番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)、そして兵庫県(ひょうごけん)の南西部(なんせいぶ)を中心(ちゅうしん)に語(かた)り継(つ)がれる播州皿屋敷(ばんしゅうさらやしき)です。

ここでは、そのストーリーを簡単(かんたん)に紹介(しょうかい)します。

番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき / Banchō Sarayashiki)

番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき / Banchō Sarayashiki)

これは約(やく)400年前(ねんまえ)の物語。江戸(えど)の牛込五門内五番町(うしごめごもんない ごばんちょう)に、深(ふか)い井戸(いど)のある裕福(ゆうふく)な邸宅(ていたく)がありました。そこは、旗本(はたもと)の青山播磨主膳(あおやまはりましゅぜん)が愛人(あいじん)やメイドたちと暮(く)らしていました。

ある日(ひ)、屋敷(やしき)に奉公(ほうこう)していたお菊(きく)という女中(じょちゅう)が、青山播磨の大切(たいせつ)にしていた10枚(じゅうまい)の皿(さら)のうち1枚(いちまい)を割(わ)ってしまいます。青山播磨の奥(おく)さんは激怒(げきど)し叱(しか)りましたが、青山播磨はそれでは手(て)ぬるいと、お菊に厳(きび)しい体罰(たいばつ)を加(くわ)え、なんと中指(なかゆび)を切(き)り落(お)とすという非常(ひじょう)に残虐(ざんぎゃく)な仕打(しう)ちをします。

折檻(せっかん)の末(すえ)、狭(せま)い部屋(へや)に閉(と)じ込(こ)められたお菊は、その夜(よる)屋敷(やしき)の井戸に身(み)を投(な)げてしましました。

番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき / Banchō Sarayashiki)

このお菊が井戸に身を投げてからというもの、青山家には様々(さまざま)な怪奇現象(かいきげんしょう)が起(お)こるようになります。
深夜(しんや)になると、きまって井戸の底(そこ)から、「1枚…2枚…」と皿を数(かぞ)える女(おんな)の声(こえ)が屋敷中(やしきちゅう)に響(ひび)き渡(わた)るようになります。また、奥(おく)さんがやがて子供(こども)を産(う)みますが、なんと産んだ子供には中指(なかゆび)がなかったそうです。

このお菊の亡霊(ぼうれい)のうわさが瞬(またた)く間(ま)に広(ひろ)がり、、青山家は「皿屋敷(さらやしき)」と呼(よ)ばれ忌(い)み嫌(きら)われるようになりました。
その後(ご)も長(なが)く怪奇現象はおさまらなかったのですが、ある日お菊の霊を弔うために僧侶(そうりょ)が読経(どっきょう)をおこなっていると、皿を数える声が「8つ(やっつ)……9つ(ここのつ)……」と聞こえます。そこですかさず僧侶が「十」とつけ加えると、菊の亡霊が「あらうれしや」と消えたそうです。

播州皿屋敷(ばんしゅうさらやしき / Banshu Sarayashiki)

世界遺産にもなっている姫路城。その第9代城主(じょうしゅ)小寺則職(こでらのりもと)は家臣(かしん)だった青山鉄山(あおやまてっさん)によって、城(しろ)の乗っ取(のっと)りを企てられて、花見(はなみ)の宴会(えんかい)で危(あや)うく毒殺(どくさつ)させられそうになります。

播州皿屋敷(ばんしゅうさらやしき / Banshu Sarayashiki)

この毒殺未遂事件(どくさつみすい)は、則職の忠臣(ちゅうしん)の愛人(あいじん)だったお菊が通報(つうほう)したために暗殺(あんじん)は未遂(みすい)に終(お)わります。しかし、お菊は鉄山の家臣の1人に密告者であることを知られ、自分の愛人になるよう迫られます。お菊がその申し出を断ると、家臣は激怒し、お菊が管理をまかされていた家宝の皿10枚のうちの1枚をわざと隠して、因縁を付けます。そして、とうとう責め殺して古井戸に死体を捨ててしまうのです。

それ以来、その井戸からは夜(よ)な夜(よ)なお菊が皿を数える声が聞こえたそうです。
やがて、鉄山の一味(いちみ)は討(う)たれ、姫路城は無事、則職の元(もと)に返(かえ)ってきました。その後(ご)、則職はお菊のことを聞(き)いて、その死(し)を哀(あわ)れみ、十二所神社(じゅうにしょじんじゃ)の中(なか)にお菊(きく)を「お菊大明神(おきくだいみょうじん)」として祀ったと言い伝えられています。
十二所神社は現在、「お菊神社(おきくじんじゃ)」の別名でも知られています。

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